損傷の検出: 軸受の早期損傷における真の原因の特定

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    2019 5月 02, 09:00 CEST

    軸受の早期損傷は「ホワイトエッチングクラック」が原因とされることがよくありますが、真の根本原因を追究することが、より効果的なソリューションにつながります、とSKFの疲労モデル・試験担当の上級研究員であるErik Vegterが述べています。

    2019年5月2日、スウェーデン、ヨーテボリ: 近年の製造基準や予知保全のような技術により、軸受の早期損傷がめったに起こらなくなりました。 しかしながら、これは未だに発生しうることで、発生すれば、壊滅的な影響をもたらす可能性があります。 最も懸念されていることは、一部の損傷した軸受は計算された寿命限界には遠く及ばず、定格寿命の5~10%しか運転していないことがあります。 これは多額の出費の原因となり、計算寿命またはそれ以上の寿命を軸受に期待しているお客様にとって頭痛の種となっています。

    風力タービンのギアボックスなどの一部のアプリケーションでは、他に比べ軸受の早期損傷が発生しやすいことが分かっています。 お客様にとって重要なことは、損傷原因を分析し、それを是正することです。 しかしながら、軸受の早期損傷の正確な原因については様々な議論があります。

    共通する早期損傷の特徴の一つに、「ホワイトエッチングクラック」(WEC)と呼ばれる軸受表面下に見られる白色の小さな亀裂網、または軌道面表面に見られる小さな軸方向の亀裂があります。 軸受の早期損傷のほとんどで認められるため、一見ではこれらが問題の原因と考えられるのは当然です。

    しかし、SKFが実施した4年間の広範な研究プロジェクトにより、これらの亀裂は実際には損傷の連鎖の終わりに発生し、亀裂網が生じる早期損傷軸受では当然の結果であることが明らかになりました。 SKFの専門家チームは、WECは目に見える損傷の兆候にすぎず、根本原因の一部ではないと結論付けました。

    SKFはこれまでに、軸受の早期損傷を引き起こす7つのメカニズムを特定し、 短い軸受寿命およびWECの発生という一つの共通する結果に結びつけました。 その結果から、SKFは軸受の早期損傷を分類する図表を開発しました。これはアプリケーションエンジニアとお客様が連携し、損傷の真の根本原因を見つけることで、最適なソリューションを探し出すことに役立ちます。

    この新たな知見にもかかわらず、一部の早期損傷はWECが原因とされ、それを根拠に解決(通常、損傷した軸受を同一の軸受で置き換え)されています。 しかしながら、こうしたアプローチを不必要に繰り返すことより、問題を掘り下げて、損傷の根本的原因を特定することが極めて重要です。 SKFの研究により、一連の根本原因を特定し、個々のケースに対し、より正確なソリューションを探し出すことが可能となりました。

    プロジェクト詳細
    プロジェクトでは、現場で損傷した軸受に認められる状態を正確に再現し、広範なラボ試験(光学顕微鏡・走査電子顕微鏡や超音波による調査)が行われました。 管理された条件で軸受を損傷させることで、SKFは損傷メカニズムを正確に特定でき、各問題により的確で的を絞ったソリューションを見つけることが可能となりました。

    SKFは、各根本原因について、重要な運転条件を試験装置上で体系的に再現しました。 これによりWECを引き起こした特定の条件を確実に知ることができ、亀裂と構造的な応力との関連を証明することができました。 このプロジェクトでSKFは、一般的な軸受の転がり接触疲労と加速度的な疲労(軸受の加速度的な剥離)の両方に関して、WECの役割を明らかにしました。

    早期損傷のない軸受の転がり接触疲労では、WECは一般に繰り返し応力と荷重に起因しています。 しかしながら、加速度的な疲労では、WECはより広範に発生し、高い応力、低い材料強度に加えて、摩擦と潤滑の影響など、様々に起因することがあります 。

    WECは、軸受鋼のミクロ組織内の亀裂です。 研磨・エッチングした軸受鋼サンプルのミクロ組織が変質し、白く見えることから、このような名が付いています。 影響を受けたエリアは、超微細なナノ結晶性のカーバイドフリーフェライト、またはカーバイド粒子が非常に細かく分布しているフェライトを取り込んでいます。 ホワイトエッチングエリア(WEA)は、転動体の転動により亀裂面に生じる摩擦でアモルファス化されることで形成されます。 これらのエリアは、腐食液に対するエッチング反応が低いため、光学顕微鏡では白く現れます。 亀裂周辺のホワイトエッチングエリアは、その周囲や影響を受けていないミクロ組織より10~50%硬くなっています。

    分類体系
    SKFは、新しいアプローチを用いて軸受損傷の分類体系を開発しました 。 これは、より正確な診断に基づいた特定のソリューションを提案する手助けとなります。 例えば、潤滑の問題またはトライボケミカル作用により損傷が引き起こされた場合、黒色酸化処理した軸受への変更をSKFが提案することがあります。 他の損傷モードが特定された場合、高強度ステンレス鋼やハイブリッド軸受といった製品からソリューションを提案することがあります。

    総合して、一部詳細に関しささいな意見の相違がありましたが、研究は高い評価を受けています。 ホワイトエッチングクラックが、異なる損傷モードによって生じるという考えの要旨については、全く議論がありません。 しかし、まだ多くの課題があります。 SKFでは、例えば電流で軸受が故障する条件は、まだ再現していないので、ラボでこれらの実験を行っています。

    ソリューション
    新たな損傷モードの発見に焦点を置いていましたが、現在はより良いソリューションの開発へと転換しています。 研究開発の強化を通して、各損傷の根本原因によりよく対応できる材料や熱処理の最適な組み合わせをSKFは追求しています。

    SKFは、損傷に対する根本原因のリストを作成するとともに、弱体化要因を「高い応力」と「低い材料強度」に類別し、これを基にした一般的推奨事項を考案しました。 推奨事項は、軸受システムや設計プロセスなどのアプリケーション自体と、軸受の堅牢性をさらに向上させる可能性とを区別しています。 早期損傷を防ぐための最も効果的なオプションは、アプリケーションの特定の状況下によって決まります。

    一方で、風力タービンギアボックスでは、この要求の厳しいアプリケーションにおいて、SKF黒色酸化処理軸受は強固なソリューションであることが証明されています。 黒色酸化処理軸受は10年以上にわたり風力市場向け、およびすべての主要ギアボックスメーカーの最も重要な箇所向けに大量に納入されており、非常に低い故障発生率が報告されています。(< 50ppm、分野における26万個以上の軸受に基づく)。 

    ギアボックスにおける黒色酸化処理の堅牢性向上は、極めて厳しい運転条件に対抗するユニークな特性の組み合わせにより説明することができます。 ラボのテストでは、この処理が潤滑剤の吸着性とスミアリング耐性を向上させ、劣悪な潤滑状態やスリップが生じやすい状態において優れた性能を示しました。 フレッチング、マイクロピッチングおよび、亀裂のリスクを低減することが可能です。 腐食および化学物質に対し耐性のある黒色酸化処理軸受は、湿度や潤滑油中の反応性の強い成分による影響を低減します。 また、特に風力ギアボックスにおける複合的な摩擦条件下において、摩擦挙動を向上させ摩耗を低減します。適切な潤滑条件下で運転している場合、黒色酸化層は低速の部位においても、運転開始数年後もほぼ健全な外観であることを現場の事例が示しています。

    軸受の早期損傷はそれぞれ特有で、早期剥離の潜在的理由は数多くあります。 根本原因は一つではないため、各損傷は関連する運転条件に従って調査する必要があります。 このことを理解し、ホワイトエッチングクラックの診断から離れることは、 問題をより正確に診断し、より迅速なソリューションを確保するのに役立ちます。

    内容についてのお問い合わせ:
    ® プレス向け広報 : Nia Kihlström, +46 31-337 2897; +46 706 67 28 97; nia.kihlstrom@skf.com

    SKFは軸受ビジネスにおいて、誰もが認めるリーダーであることを使命としています。 SKFは軸受、シール、潤滑、状態監視および保守サービスを含む、回転軸周辺のソリューションを提供します。 SKFは130カ国以上に拠点を配置し、世界中に約17,000の代理店を展開しています。 2018年度の年間売上高は857億1300万スウェーデンクローナ、従業員数は44,428人です。 www.skf.com

    ® SKFはSKFグループの登録商標です。

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